9月26日、福岡県宗像市で「JAFセーフティプログラム」が開催された。2023年のWRC第13戦「フォーラムエイト・ラリージャパン」のオフィシャル参加者を対象に、座学によるRally1ハイブリッド車両の構造や乗員の救助方法の講習、さらに実車両を使用した救出訓練が行われた。
このJAFセーフティプログラムはFIA基金助成を受けてJAFが主催、全日本ラリー唐津組織委員会が運営する講習会で、前述のとおり、主にラリージャパンに参加するオフィシャルのレスキュー知識および技術の向上をターゲットに実施。宗像地区消防本部を筆頭にトヨタ自動車、地元ディーラーのトヨタカローラ福岡の協力のもと、二部構成で本格的な講習が実施されていた。
第一部の座学実習はホテルの会議室で行われた。まず、最初の講義がトヨタ自動車GAZOO Racing CompanyのGR車両開発部で先行開発を担っている長本真氏を講師に迎えて行われた「Rally1カーの構造および安全装置」で、文字どおり、Rally1カーのハイブリッドシステムの構造や車両規定、ハイブリッドの安全機構を解説。さらに過去の事例を紹介しながら、クラッシュや火災のリスクなどを紹介した。
これに続いてトヨタカローラ福岡の技術グループに在籍する石丸淳一氏/山口裕輝氏が講師として「次世代自動車安全講習」を実施。次世代自動車となる電動車の種類(HEV/PHEV/BEV/FCEV)や各自動車の特徴や構成部品、駆動用バッテリの特徴を解説したうえで、高電圧に対する車両側安全対策や火災発生時の対応、救助事案に対する救助者の安全確保などレスキュー時の注意点が説明された。
午後に行われた第二部は宗像ユリックスプレイ広場へ舞台を移して、実車両を使用した実技講習が実施された。まず、トヨタカローラ福岡のサービス技術グループの協力のもと、2台の市販ハイブリッド車両を使用しながら、ハイブリッドシステムの停止の方法やレスキュー時に乗員へアクセスするために車両切断を行うときの注意点としてサイドエアバックの場所を解説。
さらに宗像地区消防本部の協力のもと、普通乗用車を使用したレスキューの実施方法など解説され、窓ガラスの破り方や車両の切断など救助者へのさまざまなアクセスの仕方や救助者の固定方法、搬出方法などが実演された。
そして、ラリージャパンに参加するオフィシャルたちも宗像地区消防本部のアドバイスを受けながら、救助者へアクセスするための車両切断を実践した。今回使用した車両は競技車両ではなく、市販ハイブリッド車両のアクアだったが、特殊な工具でウインドウを割ったり、ドアやフェンダー、ピラーを切断するなど一連の作業を体験していた。
同時に宗像地区消防本部の救急救命士、吉田恵助氏がRally1ハイブリッド車における救助方法のポイントとしてグローブやシート、シューズなど電圧を絶縁するためのアイテムや使い方、手順などを解説。ラリージャパンでのアクシデントにもオフィシャルたちが冷静かつ迅速に対応するために、万全の準備が行われていた。