エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組がクレイグ・ブリーンに捧げる1年半ぶりの勝利
4月21~23日までクロアチアの首都ザグレブ近郊で開催されたWRC世界ラリー選手権第4戦『クロアチア・ラリー』は、TOYOTA GAZOO Racing WRTのエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が優勝した。エルフィン・エバンスの優勝は約1年半ぶりとなる。
荒れるクロアチア・ラリーの前評判通り、初日からセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)とカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)が走行中にホイールにトラブルを負って首位争いからいきなり後退。そうした中で首位を走ったのがティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)だった。
そんなヌービルも2日目のSS11でまさかのクラッシュを喫しデイリタイア。ここでエルフィン・エバンスがトップに立ち、2番手オット・タナク(フォード・プーマ・ラリー1)に対し25.4秒差でデイ2を終えた。
そして最終日、4か所のSSでの勝負となる。勝負のSS17、エバンスは3番手タイム、一方のタナクは6番手タイムにとどまりふたりの差は30.5秒に拡大。残りの3SSはエバンスは慎重な走行で首位を守りきり、2021年ラリー・フィンランド以来の優勝を飾った。
今回のクロアチア・ラリーは、事前のテストランでクレイグ・ブリーン(ヒョンデi20 Nラリー1)が事故死するという悲しみのなかで開催されたラリーとなった。ブリーンの家族の希望により開催されたとはいえ、選手たちの悲しみや動揺は計り知れない。
ラリースタート前には関係者が揃って追悼セレモニーを行うシーンも見られた。また、SS後のインタビューなどでは各選手が口々にブリーンに対しての哀悼の意を示していた。
表彰式にはラリー1に参戦する各選手が登壇し、国歌はブリーンの母国アイルランド国歌のみの演奏となった。
フォーラムエイト・ラリージャパン2022におけるクレイグ・ブリーンの活躍も記憶に新しい。
初日SS1鞍ヶ池SSで2番手タイムという上々のスタートを切ったものの、Day2のSS4設楽SSで赤旗の原因となるクラッシュ。残念ながらデイリタイアを喫してしまった。しかし、マシンを修復してDay3から戦線復帰するとコンスタントに5番手・6番手タイムを記録。そして最終日は巧みなタイヤマネジメントによりSS18恵那SSでステージウインを果たす。
続く最終SS旭高原Wolf Power Stageでは、実施が危ぶまれるほどの雨や濃霧という厳しいコンディションとなり、上位勢が安全面を考慮して軒並みペースダウンせざるを得ない状況のなか、ブリーンは渾身のアタックを魅せ、なんとパワーステージウイン。5ポイントを獲得し、デイリタイア後の条件のなかでチームに最高の貢献を果たした。3位表彰台の勝田貴元選手とともにフォーラムエイト・ラリージャパン2022を大いに盛り上げてくれたドライバーのひとりである。
フォーラムエイト・ラリージャパン2023での活躍も期待されていただけに、今回の事故は残念でならない。
心よりクレイグ・ブリーンのご冥福をお祈りしたい。
■WRC第4戦クロアチアラリー 正式結果