1975年フォード・エスコートは、第2世代目の新型エスコートRS 1800 Mk.2へとモデルチェンジした。成功した初代エスコートRS1600や、それ以前にフォードのラリー活動を支えたコルチナ・ロータスからの系譜を継ぐにふさわしいマシンだった。
当時イギリスのエセックス州ボアハムにあったフォード・モータースポーツは、モデルチェンジしたRS1800をラリーで活躍できるように改良を加えた。フロントストラットサスペンションはそのまま、リヤはリーフリジッドをダミーとし、トルクロッドを追加して4リンク式とすることでハンドリングとリヤの追従性が向上。エンジンはブライアン・ハートチューンのF2レース用BDAエンジンを搭載。このBDAエンジンはウェーバーキャブ装着により240馬力が得られた。
新型エスコートは早速75年WRC最終戦RACラリーに出場。ランチア、オペル、トヨタ、日産、三菱、サーブなどがワークスチームを送り込む中、ティモ・マキネン/ヘンリー・リドン組のエスコートが優勝、2位にもロジャー・クラーク/トニー・メイソン組が入り新型エスコートには幸先のいいスタートとなった。
76年はモンテカルロ、1000湖、RACの3戦のみの出場だったが、このRACではR.クラークが優勝。RACラリーでは英国人として初めての母国優勝を果たした。しかしライバルのフィアットは、WRC制覇に向けストラトスに代わり、すでに131アバルトをデビューさせ、1000湖ラリーで優勝している。77年のWRCシーズンはフィアット対フォードの対決が予想された。
迎えた77年、フォードはマニュファクチャラーズ選手権を獲得すべく、ポルトガルからワークスチームを出場させた。ドライバーはビヨン・ワルデガルドとクラーク、アリ・バタネン。フォード勢はグラベルには強かったものの、ターマックイベントにはあと一歩フィアットに及ばなかった。こうして77年はフィアット5勝、フォード4勝でタイトル獲得は逃したものの、地元RACラリーはワルデガルドの優勝でエスコートの3連覇となった。だが、78年にはワルデガルドとハンヌ・ミッコラの体制で臨むも、フォードはフィアットの前に歯が立たなかった。
79年シーズンマニュファクチャラーズタイトルを獲得すべく、エスコートにさらなる改良が加えられた。BDAエンジンは機械式燃料噴射装置に換えられ280馬力を発生。シャシーもターマックラリーにも対応できるサスペンションを採用した。フォード勢は開幕戦モンテカルロ、第2戦スウェディッシュと2位、ポルトガルでシーズン初優勝を飾った。サファリはパスしたが、アクロポリス、ニュージーランド、ケベック、RACで優勝し、ついに念願のマニュファクチャラーズタイトルを獲得した。ライバルのフィアットは3位に沈み、代わって2位に浮上したのはバイオレットでWRCに出場していた日産だった。
80年のフォード・モータースポーツは、次世代のラリーカー開発のため新型エスコートRS1700Tの開発に着手し、実際のラリー運営を外部に託すことになった。ラリー運営を任されたデイビッド・サットンカーズは、ドライバーにアリ・バタネンを迎えて臨んだ。バタネンのコ・ドライバーはデイビッド・リチャーズ。後にプロドライブの創業者となる。チームはロスマンズタバコのスポンサーを得てシーズンが始まった。バタネンはアクロポリスで優勝、1000湖とサンレモで2位に入りドライバーズ選手権を2位、フォードもマニュファクチャラーズを3位で終え、まずまずのスタートだった。
81年、この年のマニュファクチャラーズ選手権はタルボ(サンビームロータス)vs日産(バイオレット)で終始し、フォードには厳しい一年となった。それでもバタネンはアクロポリス、ブラジル、1000湖で優勝しドライバーズチャンピオンを獲得。フォードはタルボと日産に続き3位になった。ライバルだったフィアットは、4WDターボのクワトロをWRCに持ち込んだアウディと同点のシリーズ5位で終えた。
ハイパワーの自然吸気エンジンを搭載し、後輪駆動のマシンで争われたWRCは、この年で時代にピリオドを打った。
年 | イベント名 | ドライバー | コ・ドライバー |
1975 | RACラリー | T.マキネン | H.リドン |
1976 | RACラリー | R.クラーク | S.ペッグ |
1977 | サファリラリー | B.ワルデガルド | H.トーゼリウス |
1977 | アクロポリスラリー | B.ワルデガルド | H.トーゼリウス |
1977 | 1000湖ラリー | K.ハマライネン | M.テュッカネン |
1977 | RACラリー | B.ワルデガルド | H.トーゼリウス |
1978 | アークティックラリー | A.バタネン | A.アホ |
1978 | スウェデイッシュラリー | B.ワルデガルド | H.トーゼリウス |
1978 | スコティッシュラリー | H.ミッコラ | A.ハーツ |
1978 | ニュージーランドラリー | R.ブルックス | C.ポーター |
1978 | RACラリー | H.ミッコラ | A.ハーツ |
1979 | ポルトガルラリー | H.ミッコラ | A.ハーツ |
1979 | アクロポリスラリー | B.ワルデガルド | H.トーゼリウス |
1979 | ニュージーランドラリー | H.ミッコラ | A.ハーツ |
1979 | ケベックラリー | B.ワルデガルド | H.トーゼリウス |
1979 | RACラリー | H.ミッコラ | A.ハーツ |
1980 | アクロポリスラリー | A.バタネン | D.リチャーズ |
1981 | アクロポリスラリー | A.バタネン | D.リチャーズ |
1981 | ブラジルラリー | A.バタネン | D.リチャーズ |
1981 | 1000湖ラリー | A.バタネン | D.リチャーズ |