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【いざ、ラリージャパン2022】注目の参戦マシン紹介/Vol.1『フォード・プーマ・ラリー1』

WRC
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 いよいよ日本に帰ってくる、ラリージャパン。WRC世界ラリー選手権『フォーラムエイト・ラリージャパン2022』が、11月10~13日にシーズン最終戦として愛知県と岐阜県を舞台に開催される。北海道での開催以来、実に12年ぶりのカムバックとなる日本での世界選手権を楽しみ尽くすべく、ここではエントリーリストに名を連ねる有力参戦ドライバーや、今季より導入の最高峰“ラリー1”クラスの最新ハイブリッド車両の成り立ちや個性を紹介する。その新規定車両解説初回は、時代の変わり目で歴代モデルを”ウイニングカー”に仕立ててきた名門Mスポーツが手掛ける【フォード・プーマ・ラリー1】にスポットを当てる。

 トヨタ、スバル、ミツビシと、WRCに参戦した日本のマニュファクチャラーも各マシンを製作するなど一時代を築いたWRカー規定は、1997年に導入されて以降、幾度かの改変を経て2017年に最後の大幅変更を実施。2021年にその役目を終えるまで、実に25シーズンにわたって採用されてきた。

 そして2022年より新時代到来を告げる車両規定として制定された“ラリー1”は、これまで量産車ベースで続いてきた競技を根幹から覆すかのように、ホワイトボディを使用しないパイプフレームシャシーの容認や、サスペンションストロークの最大値規制(270mm)、アクティブデフはおろかセンターデフをもたない直結4WDにトランスミッションの5速化(昨季までは6速)、パドルシフトの禁止(つまりフロアシーケンシャル)など、要素的には“旧時代(主にGr.B)への回帰”を思わせる内容が多く含まれている。

 その上で、パワートレイン側は36φのエアリストリクターを持つ1.6リッター直列4気筒直噴ターボ“GRE”を引き継ぎつつ、時代に即した100%持続可能燃料を採用。アンチラグ用の2次エア供給バルブを禁止しつつ、全車共通の『ハイブリッド機構』を搭載するなど、旧時代と新時代が混ざり合う不思議な規則にも見える。

 この共通部品となるコンパクトダイナミクス社製のハイブリッド機構には、100kW(約134PS)を発生するモーターや容量3.9kWhのリチウムバッテリーのような基幹部品を筆頭に、インバーターに制御系コントローラーなど、すべての要素を強固なカーボン製ケーシングに内包。単体重量87kgのケースが各車両のリヤデフ直前に搭載され、熱交換器などの冷却系を含めると100kg相当の重量が車両後半部に集中するなど、前後重量配分の観点からも従来のWRカー対比で車両の運動特性には小さくない影響が出ている。

 これらの要素を踏まえた上で、フォード陣営のMスポーツは往年の名称を復活させながらも、新時代のクロスオーバーとして欧州市場でベストセラーとなっている『プーマ』をベースモデルにチョイス。ここまで『フォーカス』『フィエスタ』とセグメント違いで続いてきたホットハッチの系譜は、新たにSUVに継承されることとなった。

新時代の”クロスオーバー”として欧州市場でベストセラーとなっている『プーマ』をベースモデルにチョイスした

新たに制定された”Rally1″規定では、生産車のホワイトボディを使用しないパイプフレームシャシーも容認される(選択自由)

 

新規定開幕戦モンテカルロでは、セバスチャン・ローブが「ほとんどセット変更も加えず」にデビューウインを飾るなど、栄えある”Rally1″規定初代ウイニングカーの称号も手にした

 

■ラリー1デビューウインを飾るも、2勝目が遠い

 エンジン自体はWRカー最終年の21年に投入した新設計ヘッドを持つユニットを継承しており、化学合成&バイオ由来の新燃料対応の燃調マップとし、システム合計で514PS/600Nmのアウトプットを誇る。

 そして注目の車体は、FIAインスティテュートが開発したセーフティセルを組み込み、完全自社設計の鋼管スペースフレームを選択。サスペンション設計でもジオメトリー設定の自由度を持たせることが可能となったが、その足回りは最大270mmのストローク規制に合わせてか、リヤ側アップライトのダンパー接続位置を見直しつつも、フロント側は『フォーカスRS WRC05』時代から続く傾斜配置を踏襲するなど、これまで培ってきたノウハウを活かす設計とした。

 一方、2017年以降のWRカーでも重要度を増していた空力デザインは、今回のラリー1で適用されるスケーリング規則も活用し、この『プーマ』ではベース車のボディライン下部を大胆にカットした上で、ルーフ後端がなだらかに下がるティアドロップ的なプロポーションを持つ。そこへ『フィエスタ』時代からトライしてきたリヤフェンダーのキックアップラインや、翼端版両脇にミニウイングを搭載したリヤウイングなど、こちらも蓄積されたデータを最大限に活かそうという思惑が見える。

 ライバル陣営のどこよりも早く、この新規定車両の開発とテストを開始していたMスポーツは、こうした設計思想と熟成期間の甲斐あってか、開幕戦モンテカルロで起用した“ナイン・タイムス・チャンピオン”ことセバスチャン・ローブが、ラリーオープニングから「ほとんどセット変更も加えず」にデビューウインを飾るなど、栄えあるラリー1規定初代ウイニングカーの称号も手にした。

 しかしチャンピオンシップが進むにつれ、チームの開発資金力によるリソース不足も露呈し、同じくローブが出場したアクロポリス・ラリーでは、かつて「アクロ(悪路)を制すものは、世界を制す」と言われた格言を悪い方向で体現するかのように、デイ2までワン・ツー体制を構築しながら、最終的にマシントラブルで全滅という厳しい結果に終わっている。

 各陣営でハイブリッドブーストの使いこなしとマッピングの最適化が進んだ結果、終盤戦はターマックラリーでの優位性も薄れつつあるが、直前でアドリアン・フルモーの欠場をアナウンスし、2台体制となったMスポーツ・フォードWRT製のマシンは、ラリージャパンのステージでどんな走りを見せてくれるだろうか。

エンジン単体で380PS/420Nm、ハイブリッド出力で100kW(約134PS)/180Nmを発生する

 

サスペンションストロークには最大値規制(270mm)が設けられたが、フロント側はフォーカス時代から採用するレイド由来のレイガー製ダンパーを傾斜配置とする

 

ターマックでのハンドリングの優秀さは実証されているだけに、ラリージャパンでも一矢報いたいところだ

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