2022年のWRCはテクニカルレギュレーションを一新し、新規定「Rally1(ラリー1)」を導入しました。その最大のポイントとなるのが、内燃エンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載したことです。
エンジンは従来どおり、WRカーに搭載されていた直列4気筒の1.6L直噴ガソリンターボエンジンですが、年間使用数を昨年までの3基から2基に削減されました。さらに燃料には100%持続可能な非化石燃料を採用したことも変更点のひとつとなっています。
気になるハイブリッドユニットは、ドイツのコンパクトダイナミクス社のワンメイクとなっており、3.9kW/hのバッテリーとモータージェネレーターユニット(MGU)を冷却用ラジエータとともにリヤにマウントしています。このMGUは最大で100kWの出力と180Nmのトルクを発生可能で、エンジンの出力とEVブーストを組み合わせることによって、Rall1車両は最大500馬力の出力を誇るマシンとなっています。
もちろん、ブレーキングによる運動エネルギー回生も行われており、その回生したエネルギーを放出できるようになっていますが、ソフトウエアにおける回生、および放出のマッピングは自由に設定可能となっています。ちなみに、リエゾンなどで使用される「フル電動モード」のほか、最大10秒間、フルパワーを使用できる「ステージスタートモード」、SSにおいてマッピングに合わせてEVブーストを使用できる「ステージモード」が設定されており、ステージモードに関しては3種類のマッピングが登録できるようになっています。
一方、シャーシに関してもRally1規定モデルは特徴的で、FIAがデザインしたセーフティセルおよびチューブラーフレームを骨格として採用しています。これにベース車両をイメージした外装パーツが装着されており、ボディサイズも拡大・縮小も行えるようになっていることもRally1規定モデルの特徴です。
こうした自由度がある一方で、エアロパーツはフロントのカナードが禁止されるほか、リヤのディフューザーが廃止されるなど空力デバイスを制限しています。WRカーと比べると簡素化されたスタイリングだが、ハイブリッドユニットを冷却するためにリアの両サイドにエアダクトが設けられるなど、Rally1規定モデルは独自のスタイリングとなっています。
そのほか、コスト削減の一環としてアクティブセンターデフが禁止されているほか、ギアボックスもWRカーの6速から5速、油圧パドルシフトからシーケンシャルシフトに変更されたこともRally1規定モデルとポイントです。足回りに関してもサスペンションストロークが270mmに固定されたことで、セッティングの難易度も高いと思われます。